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横浜地方裁判所 平成6年(行ウ)14号 判決

原告

篠田健三

間瀬貞雄

右両名訴訟代理人弁護士

佐伯剛

小野毅

被告

(逗子市長) 澤光代

右訴訟代理人弁護士

横溝徹

事実及び理由

第三 争点に対する判断

一  原告らの主張は、要するに、本件業務委託契約は、法令等からみて、必要ないものであり、同契約に基づいて測量代金を支出することは違法であるから、富野前市長の後任として逗子市長に就任した被告は、たとえ前任者が右契約を締結したとしても、同じ市長の職に就いた以上、不必要なものに公金を支出すべきではなく、前任者の締結した契約を履行するため、その代金の支払いを命じたのは違法である、というものである。

これは、本件業務委託契約が必要性のない場合には、当然違法であり、前任市長が違法な契約を締結した以上、後任市長は、その地位を引き継ぐから、自ら違法な契約を締結したことになり、これに基づきされた支出行為も当然に違法となる、というものである。

しかし、当該職員の財務会計上の行為について、地方自治法二四二条の二第一項による損害賠償請求をすることができるのは、当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られるから、被告が富野前市長と同じ市長の職に就任し、同じ行政機関になつたとしても、そのことから当然のこととして前任者のした違法行為を引き継ぐというものではない。

すなわち、このような場合には、富野前市長の違法行為は、その後任市長である被告にとつては、いわば先行する原因行為であると解されるから、それに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵がある場合でない限り、右原因行為を前提としてされた当該職員の行為自体が、財務会計法規上の義務に違反し違法な場合でなければ、当該職務行為を直ちに違法なものであるとすることはできないと解される。

ところで、前記争いのない事実4によれば、富野前市長は、平成四年六月、本件基本計画区域の一部を都市計画公園とするため、都市計画法二五条に基づき区域確定測量を実施するとして「都市計画公園区域確定測量業務委託」の費目で逗子市議会の予算決議を得たが、乙一、二号証、証人嶋六三の証言及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

都市計画決定をするにあたつては、縮尺二万五〇〇〇分の一以上の総括図、同二五〇〇分の一以上の計画図を作成することが都市計画法一四条、同法施行規則九条により、必要とされるが、これらは、既存の図面に必要事項を記入するもので、通常は、県側との事前協議のため、更に参考図書として、実測にかかる計画平面図、求積図又は丈量図等が必要とされる扱いとなつている。本件業務委託契約は、神奈川県知事の決定する都市計画における都市計画公園の区域を確定するために、その事業者となる逗子市が実施したが、逗子市には、右の必要性に加え、都市計画決定以前に当該土地を先行取得する考えがあり、そのための分筆等の資料とするという目的もあつたこと、そのためには、都市計画の公園区域に隣接する西武鉄道の開発した土地を含めて測量する必要があつたこと、なお、逗子市において、史跡公園を作るという構想もあつて、西武鉄道の土地をも測量の対象としたことが認められる。

そうすると、富野前市長は、右都市計画の実施主体の長として、その原案作成のために必要があると判断して本件業務委託契約を締結して、本件測量をしたもので、この判断が誤つていたとはいえないから、これをもつて、違法ということはできない。

なお、〔証拠略〕議会における前記予算審議の中で、本件測量の必要性について、疑問を呈する意見があつたこと、前記都市計画は、結局、決定に至らなかつたこと、平成五年一二月の逗子市議会において、本件測量費に関する「平成四年度逗子市一般会計歳入歳出決算」について疑義が出され、不認定とされたことが認められるが、これらの事実は、本件測量の必要性を直ちに否定するものとはいえず、少なくとも、本件業務委託契約の締結を違法、無効とするものとはいえない。

また、本件測量にかかる立入調査が知事の命令又は委任を欠き違法であるとの原告らの主張は、この違法が右契約の締結ないしこれに基づく支出を当然に違法とするものではないから、主張自体、失当である。

そうすると、本件では、原告らは、被告が市長としてした支出命令自体の違法性を問題とすべきことになる。しかし、原告らは、被告のした支出命令については何ら違法事由を主張していないから、原告らの請求はそもそも理由がない。

なお、仮に、原告らの主張が、富野前市長を引き継いだ被告は、前任者が締結した契約が不必要なものであるならば、解約するなどして契約を解消すべきであり、それをしないで漫然と前任者の締結した契約を履行するため、その支払いを命じたのは、自ら契約を締結したのと同視できる違法行為である、という主張を含むとしても、右のとおり、本件業務委託契約の締結が違法であるとはいえない以上、この点の主張も理由がない。

二  右によれば、原告らの請求は理由がないから、これを棄却し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 浅野正樹 裁判官 秋武憲一 小河原寧)

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